ことば

2015.10.31 | Daily

 

一年前の出来事。

 

「マザーテレサがね、愛の反対は無関心だって言ってたの。」
そう言って彼女は涙を流した。

 

私はそのとき「そんなことはないよ。」と
幾度もくりかえしそう言った。

 

彼女は驚いて、
でも、そう言ってたんだよ。
そうじゃない?
愛の反対は無関心だって思わない?
と続けざまに泣きじゃくるので、
「私はそうは思わない。」とまたはっきりとこたえた。

 

彼女は本がとても大好きで、知識も膨大にあり、
マザーテレサなどの神々しい人びとが大好きだった。
私は本をあまり読まない。
なので彼女の詳しい人生のことはわからなかったのだけど
そのときはこう言った。

 

「ほんとうに愛のことを知っている人なら、”無関心”という言葉は使わない。
マザーテレサのような方なら反対の言葉だとしても、もっと自分を大切にする言葉を使うと思う。
それは翻訳が違うか、別の人が作った言葉なのかもしれないよ。」と。

 

 

今でもそれはほんとうにそうなのだと心から思える。
マザーテレサが言ったかどうかなど真実はわからないのだ。
自分で解釈し、自分でいくらでも選べる。
素晴らしいひとびとの言葉には力がある。
けれどその言葉はことばとしてだけ存在しても、ひとの心を揺さぶる。
わたしは自分のこころにやさしく響くことばを選びたい。
きらきらしたことばがそこかしこに、たしかに、あるのだから。

 

 

もうすぐ久しぶりにその彼女と会える。
きっともうあのときの彼女ではないはずだ。