石との日々
はじめて石を身につけたのは小学生のときだったように思う。
父に国際見本市へ連れて行ってもらい
異国の雑貨や調度品が雑多に並び、
初めて見る国の人びとが沢山いることに戸惑いながら
小さなわたしはただその不思議な熱気に圧倒されるばかりだった。
そんな中で選んだものは
水晶のペンダントと、銀のスプーンに風景が描かれていたものと、
藁でつくられた天使の置物。
水晶のペンダントには象形文字のようなものが刻まれていて
たまにそれをつけるのが楽しみだった。
中学生になり、
周りの友人達はチェーンにチャームがついたかわいらしいものを買っているというのに
わたしはというと近所のファンシーショップで買った
皮ひもの水晶のペンダントをつけていた。
水晶を通して眺める透明な景色が好きだった。
高校生になると私の天然石ブームがやってきて
アルバイトをして貯めたお金の中から少しずつ小さな原石を買うことにした。
ラピスラズリ、ムーンストーン、ローズクォーツ、ルチルクォーツ、
カーネリアン、ぺリドット、タイガーアイ、アメジスト・・・
石を眺めたり、握ったりしているだけでなぜか落ち着いた。
母はわたしを遠巻きに見ながらも何も言わずにいてくれたように思う。
川や鳥の声のCDをレンタルショップで借りてきて
夜は小さな音で流しながら石を握り眠りにつく。
その時間は、不思議と自分が自分の世界へ戻れるような気がしていた。
20代になって天然石ブレスレットが流行りだし
同じように持っているのがなんだかしっくり来なくなり
石を見てもこころが動かず買わなくなった。
私の中で石は共にあるだけだった。
そうして30歳を過ぎ、ふとしたきっかけである原石を手渡されたとき
ただ素直にその石を ”綺麗” だと感じたのです。
それは花や植物のうつくしさを愛でるように、
空や山や海や木を眺めパワーを抱くように
人や動物とふれあい癒されるように
自然とともにある石も同じなのだと知ったのです。
いくつかの原石としばらく一緒にすごしたあと
そのひとつと共にすることになりました。
あんなに離れていたのにすんなりと受け入れた自分がいて
あまりにもそれは自然だったので驚いたのだけど
石はただ私と自然を繋げ、そのままでいてもいいのだと、
小さなころに感じた感覚をようやく思い出すことができたのです。
今も、私のそばにはただ、石があるがままの姿でいてくれる。