.

2016.10.26 | Daily

 

 

まだ19の頃。

2時間かけて通っていた学校だったこともあって

毎日授業が終わると走って帰っていた。

3回乗り換える電車に乗り遅れたくなくて、信号が赤だったときは

ショートカットをして3車線の道路を横断することも少なくなかった。

 

ある日、

いつものようにショートカットをしようと思って車の間を全速力ですりぬけて渡ったら、

目の前を右折の車がすごいスピードで過ぎ去った。

一瞬時間が止まって、自分はなんとなくそこにいるのにいなかったような感覚がした。

 

 

その夜から不思議なことが起こった。

耳元で声が聴こえるし、窓を閉めているのに風は吹く。

眠った瞬間、お腹の上にどっしり何かがのっているし、

たまに自分が自分から離れてぐるぐるしているのもわかった。

(今思えばそんな環境で毎日よく寝ていたなぁと思うけど)

 

しばらくそんな日々が続いて、引っ越しが決まりそれはぴたっとなくなった。

そのあたりの記憶はあまりなくて、

荷造りした記憶もないし、どう引っ越したのかさえ実のところよく覚えていない。

 

 

そうして時折、わたしはあのとき生かされたのかもしれないと感じることがある。

もしかしたら19でいなくなっていたかもしれないと。

もともと見えない世界があたりまえの家系で育っていることもあって、

そんなこともすとんと落ちた。

むしろ、あたりまえだった見えない世界があたりまえでないかもしれないことに気づいた。

あれから同じ19年の月日が過ぎました。

 

 

人生はふしぎだな、と思う。

ふしぎだけれど、とてもあたたかい。

今をもっと生きなさい、と言われたことばを、反芻、そしてまた反芻した。