氷砂糖

2016.08.16 | Daily

 

 

お盆はお迎え団子をお供えして

父の写真とひさしぶりに心のなかで話をした。

 

 

・・・

父の亡くなる最後の夜、

私は一人で病院に泊まっていた。

 

「あんな、足の上におっきい荷物があるねん。

それな、どかしてもろたらお父さん歩けるねん。」

朦朧としていた父が最後に笑った姿だった。

父はよく困ったような顔をして笑う癖があった。

あのときの笑顔はほんとうの笑顔ではないかもしれないけれど、

私が見た最後の笑顔だった。

今日はそれを思い出して、静かに涙がこぼれた。

涙が、なぜか甘かった。

 

そうだ 悲しみはきっと心に固めて氷砂糖のようになるんだ。

悲しみで固めた氷砂糖は、何年もかけてまたゆっくりゆっくり溶けてゆく。

だから今は静かな気持ちが漂っている。

悲しみも、苦しみも、痛みも、溶けてなくなるのではなく、

静かに変化して、流れてゆく。

どんな感情も、山のようにふくらんで、最後は同じところへゆくんだ。